再び

4/4
前へ
/4ページ
次へ
 「信じられない」  そう言って見送られた。普通は、「おめでとう」とかそういうのなんじゃないかと思う。ただ、その言葉には、それより大きな祝福が込められている。  その表情が、その声がとてもあたたかいから。私も嬉しくなる。  およそ一か月前は、不安に押しつぶされながら、進んだ道が、とても輝いて見える。  会場に入ると、真新しいスーツを着た大学生が並んでいる。もちろん、私もその一人。  学籍番号で指定された席に座る。名簿を眺めながら、開始の時刻を待つ。  「大丈夫そ……だね」  その声がした方を見ると、彼が立っていた。  「もしかして、ここの席」  私は、空席となっている隣の席を指差す。本当はわかっているのに、知らない振りをしてたずねた。  「また隣になったね」  やっと並べた。これは、おそらく机に残されているパンフレットのおかげ。  それは、距離の開いた私たちをつなげてくれた運命の一冊。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加