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「信じられない」
そう言って見送られた。普通は、「おめでとう」とかそういうのなんじゃないかと思う。ただ、その言葉には、それより大きな祝福が込められている。
その表情が、その声がとてもあたたかいから。私も嬉しくなる。
およそ一か月前は、不安に押しつぶされながら、進んだ道が、とても輝いて見える。
会場に入ると、真新しいスーツを着た大学生が並んでいる。もちろん、私もその一人。
学籍番号で指定された席に座る。名簿を眺めながら、開始の時刻を待つ。
「大丈夫そ……だね」
その声がした方を見ると、彼が立っていた。
「もしかして、ここの席」
私は、空席となっている隣の席を指差す。本当はわかっているのに、知らない振りをしてたずねた。
「また隣になったね」
やっと並べた。これは、おそらく机に残されているパンフレットのおかげ。
それは、距離の開いた私たちをつなげてくれた運命の一冊。
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