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今までは、来るたびに気分が上がったはずだった。なのに、今日は、不安な気持ちばかり迫ってくる。気分は沈むばかりだ。
普通の親なら、励ましてくれるはずなのに、落ちる前提で話される。
記念受験。そう言われても否定できない。
楽しむことなんて考えられなくて、ただうつむきながら、歩くことしかできない。
引き返してはいけない。そう思いながらも、「時間の浪費」、「入学準備とか色々した方が有意義でしょ」、「受験お疲れ様」そんな声ばかりが、再生される。それは、きっと事実。
下を向いて歩いていたはずなのに、なにもないところで転んでしまった。
幸いのことに傷は出来ていない。それでも痛かった。集まる周りの視線も痛かった。
散らばったノートや筆箱。地面に顔を伏せたまま。このまま受ける事すら叶わないかもしれない。
「大丈夫そ…」
聞きなじみのある声、聞き覚えのある言葉。顔を上げると、それらは彼の手の中にあった。
「……大丈夫だって」
本当はお礼を言いたかった。それでも言えなくて、強引にそれを受け取る。
「余計かもしれないけど、お守りにお守り足しといたから」
彼はそう言って行ってしまった。
意味が分からず、ただそれをしまおうとしたとき、パンフレットの表紙に「十分頑張ってたよ」と書き足されたの目に入った。
不安になってる余裕はない。諦めるわけには、いかない。
再び彼の隣に並ぶまでは。彼のくれた夢を叶えるまでは。
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