少年Aの監視役

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少年Aの監視役

第一話 訪問 「ぴんぽんぴんぽーん♪」 「…なんなんだようるっせぇな」  真夜中、ある一軒家のインターフォンが鳴っていた。その家の住人の1人である陽太は、だるそうに玄関に向かう。しばらく無視していたがインターフォンは一向に鳴り止む気配がない。  ガチャ、とドアを開けると視界のかなり下に、インターフォンを押した主……と思われる子供が立っていた。その子の背丈は陽太の腰ほどまでしかない。 「誰」 「陽太くんはいますか? 僕、ハルキっていいます!」 「本当に誰。俺、お前のこと知らないんだけど」 「もしかして君が陽太くん? わあ~! ちょうどよかった! 今日は君にお話があってね~?」 「おい、ここで勝手に話進めんな」  玄関先でケラケラと笑うハルキは次々に表情を変えながら話をしていく。その様子はさらに陽太をイラつかせていた。 「じゃあ、お話の続きは陽太くんのお部屋がいいなぁ!」 「あげるわけねぇだろ。帰れよ」 「ええ~帰るとこなんてないよー! 今日から僕の居場所は陽太くんのところなんだから!」 「意味わかんねぇこと言ってんじゃねぇよ!!」 「痛っ!」  陽太はハルキを突き飛ばし、玄関の扉を閉める。鍵を閉めてすぐさま二階の自室に上がった。 「はぁ」  なんなんだ、本当に。気味が悪い。不快さをぬぐえないまま、先ほどまで読んでいた漫画を取り出し、布団に寝転がる。 「…………」  こつん、こつんこつん。  しかし、読んでいるはずが何故か頭に入ってこなかった。それはきっと、微かに聞こえる変な音の所為。 「?」  こつん、こつんこつん。  漫画の続きより音の方に意識が向いてしまい、陽太は音の正体を探し始めた。コツン、コツンと何かが当たる音がする。 「……」  見渡しても特に何もない。そうなれば今の姿勢では見ることができない窓の方角だ。 「雨か……?」  もう何ヶ月も開けていない窓に近づく途中で、陽太は足を止めた。窓の向こうにあり得ないものが見えたからだ。 「陽太くーん、開けてよー」 「はっ…!? お前どうやってそこに…!」  窓を隔てた先には先ほどハルキと名乗った子供がいた。ありえない、ここは2階だ。窓の外には足場もないし、子供の身長では登ることなんて不可能なはずなのに。 「開けて、開けて!」  陽太は恐怖を覚え、窓から距離を取った。ハルキは両手で窓をトントン、と叩いている。つまりはどこにも捕まっていないということだ。何度も言うが窓の外に足場はない。彼が近づいて喋るので、窓は少しくもり始めてきていた。 「お前……本当に何なんだよっ…!」 「僕はねぇ、陽太くんを監視しにきたんだよ。君が悪いことしないようにね!」  ハルキの言ったことは嘘ではない。陽太ー通称少年Aーは、間違いなく、後に残虐な犯罪を巻き起こす男なのである。
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