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ある日家の郵便受けに、差し出し人のない白い封筒が入っていて、中には鍵とメモが入っていた。メモには「約束」と印字されていた。見覚えのない鍵。「約束」とは何か。そもそもこれは、いたずらではないのか。僕は唸りつつ考え、記憶を繰り思い出そうとつとめた。
「あっ」
それは閃きに近い感覚で、僕の脳を刺激し、思い出させてくれた。僕は急いでN駅前にあるポストへ向かった。そこは昔彼女とデートの時に待ち合わせていた場所。
(ああ、やっぱりいた)
海外留学していた彼女が帰国した。彼女を見送った日のことが鮮明に蘇っている。あの日彼女は言った。
「私が帰って来るまで浮気しちゃ許さないからね」
僕は応えた。
「君以外に運命の女性なんているわけないよ」
彼女は笑みを浮かべた。
「私が帰って来たら、あなたの家に鍵を入れておくわ」
そうー。あの時の約束を彼女は守ってくれた。
ポストの前で、前よりももっと輝いている彼女が手を振る。
「ようやく来たわね。すっかり忘れていたんでしょう。あなたのことだから」
「すまないね。でもちゃんと思い出した」
「ええ。許してあげるわ」
彼女は僕の手を握った。久しぶりに彼女の手に触れる。
「さぁ行きましょう。二人のお城へ」
僕たちはこれで一緒になれる。幸せな家庭を築けると僕は思っている。
終わり
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