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 今日の土曜日が待ち遠しかった。    あの後、次の日曜日も行きたかったが定休日とのことだった。  仕事の後ではお店の閉店に間に合わないしゆっくりできない。  本の続きも気になる。  ネットで探せば見つかるはずだけど、探さなかった。あの本はあのお店に行って読みたい。  再燃した読書魂を絶やさぬよう平日は違う本を読んでいた。  午前中に1週間分の家事を終わらせ遅いランチを食べてスッキリした気持ちで出かけた。  お店に入ってみると、今日は3人先客がいる。 『ああ、こんにちは。いらっしゃいませ。』とすでに常連のように出迎えてくれた。  席につく前にあの本を取りに行き、珈琲とマドレーヌを注文した。  栞はひとつしか差し込まれていなかった。そこから本を開く。  するとメモ用紙が挟まれていた。 “どうしてこの本を選んだの?”  細い綺麗な字で書かれている。    栞は無かったけど私以外にも読んでる人がいるんだ。自由に読めるとはいえお店の本にこんなこと…。  店主さんに言おうと思ったがお会計中だった。  そうか…。  言ったところで”あらあら“と笑っていそうな気がする。直接本に書き込みしてるわけじゃないし。  そう思いつくと気が楽になり、読み始めた。    主人公の男の子は夢の中ではどこにでも行けるし何者にもなれた。友達も仲間もできた。卑屈になっていた思春期に自信をたくさん身につけた。  ただ…。  目が覚めれば現実と夢を比べてしまい絶望もさらに大きくなっていく。 ……。  半分くらいまで読み終わった。男の子の絶望に胸が痛い。  ひと息つくと、先ほどのメモが目に入った。返事を書くことで、この切なさを共有できる気がして手帳からペンを取り出した。 “見たことのある題名と表紙だったので。 読み始めて、高校の後輩の男の子から教えてもらった本だったことを思い出しました。”  返事を書いていると店主さんがまたポットを持って近づいてきた。 『おかわりどうぞ。』 また、残っているのは私だけだった。 『また私だけ…すみません。』 『気にしないで。高齢のお客様が多くて…みなさんお帰りになるのが早いのよ。』  返事を書き終わったメモを挟む前に相談することにした。事情を話すと『そんな交流もいいわね。』と思ったとおりに微笑んだ。 そして私の書いた返事を見て『知ってる本だったのね?』と聞いてきた。 『私、高校3年で図書委員長をやっていたんです。その時女子ばかりなのに珍しく委員会に入ってくれた1年生の男の子がいて…』
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