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彼も図書室によく来ていたので話す機会が多く、本も音楽の趣味も不思議と気が合った。
ひょろりと背が高く落ち着いた声で話し、笑うと可愛い。
2つも年下なのに大人びた彼と話すのは楽しかった。
私は図書委員がお勧めする本を取り纏めて学校に購入申請する役目をしていた。
彼は今読んでるこの本いいですよと勧めてきた。表紙の美しい写真に心惹かれ、すぐに読みたかったが購入の順番はだいぶ後だった。
夏休み明けに貸しますねと言ってくれていたので自分では買わずに待っていた。
夏休み明け。
彼は学校に来なくなった。
いじめだとか病気だとか色んな噂を聞いたが、真相はわからないまま噂も消えていった。
気にはなったがその当時は個人的に連絡するような仲でもないと思っていた。
そのうち受験の波に流され委員会も引退し、慌ただしい日々を送る中で次第に彼を忘れていった。
この本も私の在学中には購入されなかったと思う。
『読むうちに彼のことを思い出しました。どうしてるかな。元気だといいんですけど。』
黙って聞いていた店主さんの目が潤んでいた。
店主さんにもお子さんがいて、思うところでもあったのかな。
『そうね、元気だといいわね。…ところで栞に書いてあるのはお名前かしら?なんてお読みするの?』
『名前です。りつき、といいます。』
そこから私の話になった。何歳だとか大学では何を勉強したのかとかどういう仕事をしているのか、そして恋人はいるのかなど。
自分の母親とソリが合わず、社会人になって実家から離れたところにひとり暮らしをしている私にとって、母と同年代の店主さんに自分のことを聞いてもらうのは心地よかった。
店主さんは喜美子さんというお名前だった。
たくさんお話した後、返事を書いたメモと栞を挟み、元の場所に本を戻した。
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