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蓮がココアとクッキーを持って来てくれた。蘭はお礼を言い、ココアに口をつける。頭を使って漫画を描いていたせいか、優しい甘さが体に沁みていくのを感じた。
「おいしい」
「そりゃあよかった。なら、俺はこっち読ませてもらうぜ」
蓮はタブレットを開いて描き終えた漫画を読み始める。これは蘭の漫画のルーティンだ。出来上がった原稿は担当編集者に送る前に必ず蓮に読んでもらう。担当編集者よりも的確なアドバイスを貰えることも多いためだ。
蓮が熱心な顔でタブレットを見つめる。蘭は漫画をパラパラと捲っていた。手にしているのは、十年以上前に刊行された少女漫画である。
(……あっ、失恋)
漫画のストーリーは主人公はずっと幼なじみに片想いをしているものの、その恋が実ることはないというものだった。主人公にとってその恋は初めてのものである。
「読み終わった。今回もさすが先生って感じだな」
蘭が心にモヤモヤとしたものを感じ始めた瞬間、声をかけられた。蓮に「何その誉め方。もうちょっとなんかあるでしょ!」と言うと、彼は無邪気に笑う。
「蘭の漫画、イラストが繊細で好きだぜ。絵のことはよくわかんねぇけど、相変わらず綺麗な絵だ。ただちょっと台詞で気になる箇所があってさーーー」
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