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穏やかに、熱が持続する。話しているうちに、顔が赤くなる。
「貴女の死体を、どうしても確かめたかったんです」
凍りついた焼却炉に横たわるのは……雪のように白くて、妖精のように綺麗で、女神のように気高くて、聖母のように安らかな、あたしの死体と死顔を。
彼方は絶えず望んでいた。
「でも。生きてた」
「貴女は運がとても悪いですからね」
そして、彼方は泣いた。黙って、泣いた。
あたしは、彼方が落とした涙に、手を触れる。
それは、あたしが見たこともない、感極まった涙。
零れ落ちて、星のように輝く、彼方の涙。
彼方は、泣いていた。獣のように激しく、また、雨のように優しく。
* * *
口の中で転がるバターキャンディを舌で玩びながら、あたしは彼方の背中を追いかける。
優しく絡み合ったタコノキの足や、華美でディープピンクに染まったブーゲンビリアの圧倒する林を潜り抜けて。甘い果実の香りで充満する陽の当たる世界を背に向けて。歪んだこの世界は美しくて、すこしこわい。
「バカだなぁ」
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