雪空に蒼き燕舞う

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 ふれるだけだった口づけは大胆なものへと変化していく。まだ敵陣ともいえる温室のなかなのに、彼方はあたしを押し倒す。拒むことはもう、できなかった。 「きっと僕は、貴女を絶望から寝取りに来たんです」  ……鉄の味、彼方の声、マシュマロ、触感、手触り、スカートの下、桜色の突起物、甘い吐息、二つの桃、タコノキのような太腿、軟らかい掌、赤らんだ頬、身体から涌き出る泉、白い食べられる花……絡み合いながら、溶け合いながら、求め合う。  冷え切っていたあたしの身体に、熱が発生する。蒼白い肌に朱が混じる。甘い香りはどこまでも続いていく――……    * * *  中途半端な優しさならいらなかった。未熟で幼稚な同情の方がマシだとさえ思った。だけどあたしは気づいてしまった。  彼方がここにいるということを、あたしは認めたがっている。  湿度の高い壊れかけの温室のなかで、熱帯に咲く花が垂れ流す甘い蜜を啜るように、彼方はひたすらあたしのヴァギナを愛撫して、潤んだそこを貫いた。  人工的な皮膚ではない、かつてそれしか知らなかった懐かしい楔に穿たれて、あたしは啼く。
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