雪空に蒼き燕舞う

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 温室の室温計を見る。辛うじて零度を越えている。窓の外を見る。朽ち果てた施設に置いてけぼりの死体たち。空を見上げる。雪は止んでいる。鋭い刃物のような淡月が暗闇を静かに照らしている。目の前を見る。無防備な寝顔を見せる彼方がいる……。 「もっと貴女を感じさせて」 「あっ……ん」  彼方の毒々しい色彩の肉棒が気持ちいい最奥を抉っていく。ちいさな乳首が舐め回されて艶やかなまでに赤く充血している。温室の花に化けてしまったかのようにあたしは彼方が与える快楽を享受していく。ひとつひとつの丁寧な愛撫によって、あたしの身体は白鴉に施された行為を上書きさせられる。 「もっと」 「――!」  最後まで彼方の名前を思い出せなかった。けれど、身体はたっぷり愛してくれた彼のことを覚えていた。それだけでいまは充分。絶望の淵から掬い上げようとする彼方の本気を感じられたから。  どのくらいの時間が過ぎ去ったのだろう、あたしたちはずっと抱き合っていた。温もりなんてもはや感じないはずなのに、あたしは彼方の温もりを確かに感じ取って溺れていた。
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