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橙色と瑠璃色の花弁がレモングリーンの長細い萼に収まっている。毒々しい色づかいが、閉ざされた小さな熱帯雨林に拡がりを魅せている。
人工の雲が降らす冷たい雨に濡れるなか、手に取った極楽鳥花は、先端が尖っていた。
白い指の腹に、赤い点が生れ、ぷくりと膨らむ。くちゅ、と淫靡な音を鳴らしながら、あたしは流れ出た血を舐めとった。
口腔に拡がる鉄の味が、少しだけ自身を正気に戻す。
ただでさえ暑苦しい場所だ。そこで雪のように白い冬のコートを着ているなんて、尋常じゃない。それなのに、全裸だったあたしは重いコートに包まれ、雨に降られて蒸されている。いっそのことこのまま水蒸気になって溶けて、消えてしまいたいくらい。
――事後はいつもこう。
行為の最中は気まぐれな優しさを見せるけれど、欲望を放ったらそれでおしまい。
青臭い精液の生々しさが、皮肉にもあたしを生かしているなと感じる。
いまのあたしはあの男のお気に入りの玩具。
だから、孕むことができなかったほかの被験体みたいに棄てられることもなく何度も”実験”を繰り返されていた。
あの男になぶられて死ぬのが先か、それとも発狂して死ぬのが先か。
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