前を向く

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前を向く

金曜日の夜、桜庭さんの仕事が終わってないという話を聞いて少しだけ手伝って残業していた。 金曜日なんて周りはみんな飲みに行って早々に職場を出ている。 桜庭さんは隣で作業がようやく終わったのか伸びている。 「終わった?」 「はい、ありがとうございます。」 「君もついてないよね、結婚式の前の日に残業なんて。」 「うっ」 明日はようやく沙羅と兄さんの結婚式が来る。 長かった様な、早かった様な。 明日でようやく俺も解放される様な気がして。 今までがそうだったわけじゃないけど、結婚式で本当に手が届かない人になってくれるような。 うまくいえないけどそういう感覚だった。 「先輩、良いんですよね?」 「またその話?変わんないよ、俺の気持ちは。」 相変わらず心配している桜庭さんに少し笑って答える。 本当に意外と平気なんだよ。 好きだった子が姉になるなんてそんなシチュエーションには本当うんざりするけど、全然傷付いていない。
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