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「小川くん、どんな感じですか?」
「まだ数時間だしね。でも、不満だって顔は見てて取れるよ。入ってこんな感じだとは思わなかったって空気感に出てる。」
「でしょうね、急に何も言わずこれしてきてって働かされるんですから」
「ああ、言われてみれば昨年の君もそんな感じだった」
懐かしい事を思い出して少しだけ笑う。
言われてみればそっくりかもしれない、小川と桜庭さんは。
違うのはやる気くらいで素直な反応が出る感じは似ている。
ふと桜庭さんに目を向けると、髪が鬱陶しいのか耳に掛けている。
「(あ、今の仕草、好きかも。)」
誰かの仕草にそそられる事は無いけど、普段少し隠れてる耳が出る感じとか、顔がはっきり見える様になる所とか…。
そんな事を一瞬考えて少し恥ずかしくなった。
バカじゃないの、思春期の高校生でもないし。
「髪伸びたよね君。」
「今伸ばしてるんです」
「へー、良いんじゃない?」
なんてさっきまでの自分の煩悩をかき消すように無理に話題を振った。
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