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それからしばらくすると、明らかに桜庭さんの様子が変だった。
そろそろ限界でしょ。
先輩に「ちょっとすみません」と言いながら席を立ち上がると、小川に肩を抱かれて水を飲まされようとしてる。
「(はあ?近すぎだろ。)」
少しイラッとして、すぐに彼女の近くに寄ると反対側から彼女の肩を奪う様にして掴む。
小川は少し驚いた表情をしていたけど、距離を離す様にして彼女は潤んだ目でこちらを見てくる。
本当、自分が今どんな顔してるかわかってんの。
そんな男を煽るような表情して誰に肩抱かれてたかわかってる?
「せ、んぱい?」
「何してんの、本当。」
本当、これだから手のかかる…。
「帰るよ、もう限界でしょ。」
「でも、主役置いて…」
「良いから、そんなの。」
そう言って彼女を支えながらゆっくり立ち上がった。
「俺が連れていきましょうか?」
その言葉の裏に俺が連れていきたいって言葉が見えた気がする。
そっか、好きなんだな。桜庭さんの事。
資料室で2人になったタイミング以降小川の桜庭さんを見る目が変わったななんて思っては居たけどそういうことかと今ここで確信する。
でもだめ、尚更君と2人なんてしてあげられない。
「いい、この子の面倒見るの俺の仕事だから。」
小川の言葉に軽く牽制して、店を一緒に出た。
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