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彼女を支えながらたまたま近くに止まっていたタクシーに乗り込む。
「桜庭さん、自分の住所言える?」
「んー、もう飲めない…」
「もう飲まなくていいから」
そんな会話にならない彼女に少し呆れて、この様子だと家に帰してもだな。
そう思いながら運転手に俺の家の住所を伝えた。
あれ以来初めてだ、彼女を俺の家に連れ込むのは。
突き放して悲しませた、あの日。
𓂃𓈒𓂂𓏸
家に着くと、彼女を自分の寝室のベッドにひとまず寝かせる。
人の家のベッドで気持ちよさそうに寝ている桜庭さん。
俺はそんな彼女の頬を軽く撫でる。
「本当、君わかってんの。今男に持ち帰られたの。下手したら小川に持ち帰られてたんだよ。」
そう問いかけても子供みたいな顔して寝息を立てるばかりで欲しい答えなんて一つも返ってこない。
小川に持ち帰られてたら。
そう思うと何だか滅茶苦茶腹が立って、いっそこのまま俺が…なんて思ったりした。
「(…バカじゃないの、俺も疲れすぎ。)」
そんな冷静じゃない思考を掻き消す様に彼女から離れる。
本当危機感も何も無い、手がかかる後輩…。
俺が見てないと、ってそんな気にさせられる。
君も良い年した大人なんだし、きちんとしなよ。
「…次こんな事あったらその時は襲うから。」
そう言って耳を撫でると理解してるんだかしてないんだか「んん」と声を漏らしている。
そして寝室から出て彼女から離れた。
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