自覚してしまった感情

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俺は何度か家に来てたので飾られた写真とかに気付いていたけど桜庭さんは久しぶりに来たからか、リビングで写真をまじまじと見ていた。 4人で写った写真。 結婚式の事を思い出してるのか、桜庭さんが少し柔らかい表情をしていた。 沙羅が突然「郁ちゃん」と話しかけたかと思えば、今度は俺の方を向く。 「類くん向こうの部屋行っててくれない?」 「待ってよ、何で俺だけ。」 「女の子同士の話もあるの!少しだけ時間頂戴。」 そう言って強引に兄さんの仕事部屋に突っ込まれた。 本当強引すぎる。 そうは思いつつ仕方なくデスクの椅子を引いて座る。 特に興味もない経営の本を掴んで開く。 経営学を学んでた兄さんはそのうち起業でもする気なのかその関連の本がいくつか並んでいた。 「これはね、ずっと渡そうと思ってて渡してなかった写真なの。実は4人で集まってちょこちょこ類くんと郁ちゃんの写真撮ってたの。郁ちゃんといる時の類くんがすごくいい顔してるから見てほしいなって。」 この家、意外と聞こえてくるよな、会話。 あまり別部屋に避難させられた意味もないくらい会話が聞こえてくる。 ドアとデスクが近いせいもあるけど。
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