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あーもう、言うつもりなんてなかったのに。
彼女と居ると何もかも上手く行かない。
「俺は、同じ男だしあいつが君をどんな目で見てるかとか多分君より分かってる。だから、ようやく前向いて色々考えてるのに簡単に君があいつに攫われるんじゃないかって。」
「…それ、嫉妬ですか?」
「絶対言うと思った…。」
予想通りの言葉を吐く桜庭さんにどこまでもうんざりする。
こういう時くらい鈍いままで居ればいいのに、というか気付いても普通言葉にする?
そんな俺の気持ちを聞いてさっきまで怒っていた彼女の顔がにやけていくのを感じる。
「まだ君をどういう目で見てるとか分からない。だから分かるまでは…、君が好きで居てくれる間だけでも絶対傍に居て。」
なんて嘘ついて。
わかってるよ、本当は好きだって。
だけど今はまだ、俺が君の彼氏なんてなる資格もないから。
まだ怖いんだと思う、付き合ってから思っていたのと違うって思われるのが。
本当で俺で良いのかなんてそんな考えが消えてくれない。
せめてもう少し自信が付けば。
そんな俺に呆れて待てなくなったその時は他の誰かと幸せになってくれていいから。
だから待てる間だけでも、まだ待ってて欲しい。
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