《機巧操縦》

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《機巧操縦》

 マグカップでアールグレイを飲みながらロケットを見つめているレガンにリンは意を決した様子で声を掛ける。  何事かと思ったレガンであるがリンはマグカップを機械で侵されている机に置いてから自身の平たい胸に手を置いた。  静まる空間にレガンは不思議に思っていると、リンの胸が光輝いたかと思えば機械のようなものが露出される。  驚くべき光景にレガンは口をあんぐりと開けた。 「な、なんで機械が……? 君は一体?」 「――私は機械を造り出す力を持つの。通称、機巧操縦(きこうそうじゅう)」  リンは自身が生み出した機械を置いてネジをぐるぐる巻いた。一見、時計のように思えたがそこからネジを回したことで鳩が飛び出す。  それは精巧な鳩時計であった。その造りにレガンは舌を巻く。 「すげぇな……、こんな緻密で高貴な造りをした鳩時計は初めてだ。しかも可愛らしいし……」  機械を弄りながら鳩時計の鳩を見てにっこりと微笑むレガンにリンは言葉を続ける。 「私の出生は言えない。言ってしまうと、その国の情報が漏洩されてしまうから。……でも私には使命があるの」 「使命……って?」  リンは手に胸を当ててまっすぐな瞳をした。その黒い眼はダイヤのように美しい。澄んだ瞳だなとレガンは思った。 「その国一番の機巧少女になること。素敵な機械を生み出して、――みんなを笑顔にさせること。それが私の夢でもあって、使命なんだ」  ベルのような高らかで美しい声にレガンは惹かれていく。機械というのには色んな種類がある。人々を笑わせるような機械や便利にさせるような機械、はたまた戦争に使わせるようなそんな機械だ。  だがリンは人々を笑わせるような機械を生み出したいと願った。そう願ったうえで機巧少女になりたいとこの国に一人でやってきたのだ。  レガンは精巧な鳩時計を雑踏とした机を片してから置いておく。大切にしておこうと心に決めた。 「リン、お前の使命や機巧少女には興味を持ったぜ。俺にも手伝わせてくれないか?」 「……いいの?」 「あぁ。お前が望むなら俺だって手伝ってやりたい。それに……さ」  レガンは少し恥ずかしそうな顔をしたかと思えば言葉を乗せる。 「こんな機械を造れる女の子は初めてだから、さ。その、――リンのことをもっと知りたいなって」  リンの顔が真っ赤になったかと思えば、奇麗になった机に置いていたマグカップを手に取る。  もう既にぬるくなっていたがそれでも良かった。沈黙が支配する世界でレガンは「ベッドに案内するから」にっこりと微笑んだ。  それからリンは紅茶を飲み干してベッドの傍に駆け寄る。それからレガンは床で寝ると言い出した。  リンは慌てた。 「私が床で寝るよ! いきなり来たの私だし……」 「いいんだよ。女の子を固い床で眠らせるのは性分に合わないからね。ほら、さっさと寝な」  リンは申し訳なさそうに礼をしてからベッドに入り込んでしまえば、そのまま寝息を立てていた。  レガンは安堵した様子で機械いじりを再開した。
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