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《洋服へ》
作業着に着替えたリンではあるがぶかぶかであった。だから袖を捲って裾を折ってレガンの前に現れる。
彼シャツならぬ彼服を着たリンの可愛さにはレガンは何度も撃ち抜かれそうになる。リンはそんな彼に首を傾げているが。
「大丈夫、レガン? 顔真っ赤になっているけれど……」
「だ、大丈夫だっ! さぁ、行こう!」
リンを引き寄せたレガンは街の案内がてら洋服などを買うことに専念した。
この国はアルカイドという港町である。広大な海を資源とした漁師などが働いているが町工場もあるのだ。
先ほどのアガーもここで漁を行っている。カモメがふわりと飛んだ。
「すごい! 船がいっぱ~い!」
はしゃいで船へ覗き込むリンにレガンはやはりこの機巧少女は機械が好きなんだなと感じた。船を操縦している船長に聞いて回っているぐらいだ。
やはり機械が好きなのだろう。
「リン、楽しいか?」
「うん。すっごく勉強になるよ。もと居た国では船はこんな形じゃなかったから」
「へぇ~、じゃあどんな形をしていたんだ?」
「ちょっと待ってて。—―機巧操縦!」
ふわりと胸に手を当てて生み出された機械は、ロボットのようなものであった。これがリンの国で言う船だそうだ。
「これで海を飛ぶんだ~」
「海を飛ぶ……? 空も飛べるのか?」
「空も飛べるよ。空も海も飛ぶんだ」
こんなみょうちくりんなロボットで飛ぶのかと思うと、なんとなく戦隊ものを想起する。正義の味方のロボットが助けに来る話はアニメで知った。
かっこいいなと思った。
「リンの国はかっこいいな。でもとりあえず、洋服買いに行くぞ!」
「う、うん!」
引き寄せて歩いていく姿にリンは少々恥ずかしさを覚えるが、堂々としたレガンの姿に惹かれていくのだ。
海を眺めながら洋服屋へと向かうレガンとリン。坂を上って向かった先に小さな洋服屋があった。
ベルの音を鳴らし、レガンが先頭でリンが次に入ると三つ編みの少女が出迎えた。
「いらっしゃ~い、ってレガンじゃん! どうしたの女の子連れて?」
茶髪の三つ編みに豊満な胸を見せつける女性はまじまじとリンを見る。リンは軽く会釈した。つま先から顔まで見てから女性はにこりと微笑んだ。
「あたしはスイって言うの。あんた可愛いね! レガンの彼女?」
「なっ、ち、違うよ! スイっ!」
「あれ、そうなの? じゃあ何者?」
するとリンは少し笑ってから「この国で修行をしている者です」そして続ける。
「レガンには昨日からお世話になっています。まだまだ至らない点はありますが、よろしくお願いします」
「ふ~ん。まぁレガンにも春が来たってことか! 嬉しいね、レガン?」
「……スイはうるさい。もうっ、お願いだからリンに服を見繕ってあげてよ」
するとスイは大輪のような笑みを見せ、「任せな!」リンを試着室へ移動させるのだ。
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