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3.誰が鬼か
◇ ◇ ◇
鬼柳の面の奥で、冷徹な眼光が樽谷に向いた。
全てを知っているぞ。戦慄を覚える鬼柳の視線が、そう言っている。居たたまれなくなった樽谷は、自由である首を傾け彼から目を反らした。
蝋燭の灯に浮かび上がる真紅の箱は、何も語らない。しかし、あの蓋の向こうで青白い女の生首が樽谷を睨んでいる、そんな気がしてならなかった。
小田切椿。本当に、お前なのか……?
樽谷の脳裏に、髪の長く美しい女がぼんやりと現れた。
初めて出会ったのは、駅前の本屋だった。暇つぶしに雑誌を読もうとして棚の間を移動していると、樽谷は彼女に目を止めた。
佳い女だ。弾力のありそうな瑞々しい白い肌。すらりとしたワンピースの下の身体は、肉付きもよく熟れた果実のように情欲をそそるに違いない。
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