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清楚な顔立ちを、艶のある黒髪が縁取っている。アイドルの華やかさも、ビジネスウーマンの気の強さもないが、整った眉目は育ちの良さを伺わせた。
雑誌を読むその立ち姿は凜としている。そういえば長い髪を切れば、好きな女優に似ている気がした。
しばらく女遊びに縁がなかったな。樽谷はふらふらと女に惹きつけられた。
一回り以上は年の離れた若い女だ。声をかけても振られるだろうか。いや、出会い系サイトでならそこそこモテているほうだ。まだ捨てたもんじゃない。
そう意気込んだときだった。
彼女の読んでいるのが、結婚情報誌と気づいたのは。よく見ると細い指先に、石のついた指輪が光っている。
すぐ分かってしまった、幸せそうな微笑みはすでに誰かのものだ。樽谷に向けられることはないと。
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