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「畜生、俺みたいな奴は夢も見ちゃいけないのかよ」
口に出た自分の言葉で、樽谷は思いのほか現実に打ちのめされた。
そのひがみが脆弱な心に引火した。女を見る樽谷の暗い眼に、欲望の炎が燃え広がっていく。
気がつくと書店を出た女の後をつけていた。すると、彼女は駅近くのマンションに一人で住んでいることが分かった。
それから何日か、樽谷はマンションの外に立って女の暮らしを観察した。捨てたゴミ袋の郵便物を見て、女が小田切椿という名前だとも知った。夜、明かりが灯った部屋のカーテンに人影が動くたび、樽谷はたとえようもなく興奮して仕方がなかった。
結婚を考えている相手がいるのなら、かえって好都合かもしない。男に襲われたからといって、警察沙汰にはしないのではないか……。
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