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鬼柳は音もなく立ち上がった。じわりと冷や汗が額に流れる。
そのまま白狐の鬼が部屋を出て行くのを、樽谷は見送った。
もし、あの蓋が開いたら祭壇の上の椿は、どんな顔をしているのだろう。おぞましさにぞっとして、噓を並べたてた唇がにわかに震えた。
叫んで助けを求めた方かいいのか。いや、樽谷が騒げば鬼柳も考えているだろう。自分が椿を、腕ずくで黙らせたように。
再び扉が開くと、白狐の面がゆらりと揺れた。
鬼柳は黒い無地のバッグを持っていた。
ビジネスバッグより何回りか大きい。
樽谷は血走った眼を見開いた。
乾いた口が、金魚のように開閉する。
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