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乾いた口が、金魚のように開閉する。
まさかそんな、あれは確かに捨てたはず……。
座卓にバッグを置いた鬼柳は、中身を広げた。
「随分、探すのに苦労したさ。樽谷、あんたが椿の家から持ち出したんだな」
繊細なレースを施した白いドレスが、弔いの蝋燭の灯で淡く輝いた。陰鬱な部屋には余りに場違いだった。
椿が着るはずだった、清らかなウェディングドレスを、鬼柳が樽谷の眼前に突きつける。
その腕から、本物の殺気が伝わった。
「樽谷。これから嘘偽りなく、お前の悪事を話せば命だけは助けてやろう。奪衣婆様にもうまく話をつけておく」
カタ、カタカタカタと同意するように、真紅の箱が動いて、樽谷を脅した。
「拒めば、このまま地獄行きだ。どうする?」
クヤシイ、ユルサナイ……。
か細い女の声が箱から聞こえる。強がっていた樽谷は「ヒッ!」と短い悲鳴を上げ、腰を抜かしそうになった。
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