3人が本棚に入れています
本棚に追加
白い布を敷いた小さな祭壇が、殺風景な部屋で一際明るく浮かび上がる。
樽谷の意識は、その頂にある真紅色の箱に集まった。
鮮烈な紅が、目に焼き付く。立派な花瓶が入るほどの木箱で、濡れた色が人血を塗ったようにグロテスクだ。
先程は、遺骨を飾るはずの場所には何もなかった。祭壇は「片付ける暇がないから出しっぱなしで」と柳は言っていた。遠い親戚のものを預かったと聞いたが、もう納骨したのだろうと、それ以上は聞かなかった。
祭壇を照らす多くの灯は、蝋が溶けて垂れている。やはり樽谷はしばらく眠っていたようだ。果物に花、香炉が供えられているが、あの真紅の箱は何なのだろう。
よく見ると蓋を上に引いて、前が開くようだった。
そして、腐臭は祭壇の方から漂ってくる。
喚き声を消した樽谷は、自分の唾を飲む音を聞いた。
最初のコメントを投稿しよう!