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「まことの名は鬼に柳と書いて『きりゅう』という」
「訳の分からないことを……」
「山を降り、人に紛れて暮らす鬼だ。あやかしといっても、人を騙したり金品を盗んだりして生計を立てているあんたとは違う、樽谷景一」
悪行を見抜かれて、樽谷はぎくりとした。
こいつも酔っ払っているのか。人間じゃないとか抜かして。それにしても俺はいつ、柳にフルネームを教えたんだろう?
「ああ。警察を呼ぶつもりで、こんな真似をしたのか? 俺が酔っ払って何かべらべらと喋ったとしたら、そいつは冗談ってもんだぜ。酒が入ってたから、気が大きくなっただけで」
下手に出た樽谷を鼻で笑い、柳が顎をしゃくった。
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