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2.生首の女
◇ ◇ ◇
俺は鬼柳と言う名の通り、鬼のあやかしだ。柳のときは、三十を過ぎたというのに半人前の気弱な男に見えるだろう。人の世界で暮らすにはちょうどいい隠れ蓑だ。
あやかしである感覚の鋭さを生かして、柳の姿で失せ物探しをして生計を立てている。だから時折あちらの世界から仕事が舞い込むこともあるのだ。
先日のことだ。住処にしている廃屋で、鬼柳の姿に戻っていつものように夜明かしをしていた。
「夜分に失礼いたす。奪衣婆様の命により、さる死人を連れて参った」
野太い男の声とともに牛頭人身の獄卒が、壊れた扉から入ってきた。
俺よりもずっと、荒々しい地獄の鬼だ。
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