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1.怪異
生臭い、淀んだ空気に樽谷は目覚めた。
電灯は消え、部屋は闇に沈んでいた。自分の部屋ではない。居酒屋で会った柳という年下の男と意気投合して酒を飲み、家に来ないかと誘われたのだ。
樽谷は大きな目玉を睨むように動かすと、いくつかぼうっとした光が見える。まるで人魂のようだ。部屋に点在する、その蝋燭の灯が辛うじて視界を保っていた。
部屋の主は見当たらなかった。それにしてもこの臭い、せっかくのいい気分が台無しだ。寝ている間にあいつがゲロでもしやがったのか。いやそれよりも、車が轢いた動物みたいな腐臭だ……。
年若い柳は、名前の通りひょろ長い。いじめられっ子で騙される側といった風体の男だった。マンションの一室で彼と再び酒を酌み交わすうち、樽谷は酔い潰れたようだ。
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