君が忘れたあの場所で

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――SNSはやってない。  彼女にそう言われたとき、言外に拒絶されたと思った。でも、そうじゃなかったのだ。  繋がれない場所に彼女は存在していて、もう手の届かない空のかなたへ行ってしまう。  待って、という言葉が口からこぼれそうになる。ずっと会いたいと思っていたこと、話したいと思ったこと、あの繋がりを失って、体が引き裂かれそうな孤独にひとり耐えたこと。  いろんな思いがあふれてきて、どれも言葉にならなかった。もう少しで、彼女はどこかに消えてしまうのに。 「司、会えて嬉しかった。本当に本当にありがとう」  柚葉の声が遠ざかる。すべて夢をみているようで、夢じゃなければいいと願った。でも、そうするあいだにも彼女の体は消えかかる。本当は、僕のほうこそお礼を言わなければいけないのに。  気づけば空を見あげていて、どれくらいのあいだそうしていたのかわからなかった。柚葉から渡されたカクテルグラスのキーホルダーを握りしめる。  これがここにあることが、まぎれもなく彼女が存在した証だった。もう二度と会えなくても。 「僕のほうこそ……ありがとう」  誰にも聞こえないような声でそうつぶやいた。閉園を知らせるアナウンスが音楽と一緒に流れだす。  この出来事は一生涯忘れることはないだろう。   地上で光る天の川は、いつまでもいつまでもまばゆかった。
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