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表紙をめくると現れる、自分の字で書かれた決意。このノートを手にした日、プロテストに合格して、そこから先の未来には希望しか抱いていなかった。
「結局、このザマじゃねえか」
ぽつりと呟いた言葉が、闇の中に消えていく。いくら努力を積み重ねていたつもりでも、結果がちゃんとついてきてくれていたとしても、こうして予想だにしていなかった方向から、何もかもを壊されてしまったじゃないか。不測の事態を頭に入れていなかった僕が悪いのか。だったら、もう生きるということ自体が苦行そのものじゃないか。
工藤が血相を変えて病室に飛び込んできたのは、僕がジムを通じて現役引退の発表をした、その日だった。
「どういうことっすか! 唱飛さん!!!」
病院では静かにしなければならないという常識を忘れてしまったように、フロア中に響き渡りそうな大声で、工藤は開口一番に喚いた。
「どうもこうも、発表のとおりだよ。ほら、僕はこの通りだ。もうリングに上がっても、無様な姿をみんなに見せてしまうだろうからな」
「そんなの、やってみなきゃわからねえじゃないっすか!」
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