てんし、てんし。

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 私はびびっときました。  実は新しい作品のネタに煮え詰まっていたのです。もし他の人の許可が貰えるのなら、このワラエキという天使様のネタを貰えないだろうか、と思いました。そのためには、このお話を書いた人を探さなければいけません。  私は白い本を持ち出すと、その本を見せながら文芸部の人に声をかけて回りました。しかし、誰もワラエキのお話の作者ですよ、という人は見つかりません。  しかし、ワラエキに興味を持ってくれる人は増えていきました。クラスのユキミちゃん(仮名です)が、試しにワラエキの絵を描いてくれたんです。彼女は美術部で、鉛筆の絵もすごく上手い人でした。彼女は、ワラエキは普通の天使ではないような気がする、と言います。きっと美しい男性の体に、天使の翼があって、頭は牛になっているんじゃないかというのです。  何故そう思ったの?と尋ねたら、わからないと言いました。きっと彼女も想像力が豊かなのでしょう。  するとその絵を見た他の子たちも、みんな気になったみたいで、ワラエキの絵を描き始めてくれました。私が持っている白い本も、クラスのみんなにひっぱりだこです。  朝、先生がホームルームを始める時間になりました。最初はざわざわしているみんなを怒っていた酒井先生も、私達がワラエキの絵と本を見せると“面白そうね!”と笑ってくれたのです。  先生も、黒板に大きくワラエキの絵を描きました。  ユキミちゃんが描いたワラエキの絵のインパクトが強かったのか、先生も、それ以外のみんなも、牛頭の男性の天使様、の絵を描くようになりました。私も描いてみました。とりあえず、このブログに挿入してアップしておこうと思います。ユキミちゃんほど上手な絵じゃなくてごめんなさい。  一時間目の時間になって英語の先生が来て、まだ出席も取っていないうちのクラスにびっくりしていました。  でも、私達がワラエキの話をすると、“そういうことなら仕方ないね”と納得してくれました。  それで、ええっと。  授業の中でもいろいろ雑談したり、休み時間にクラス外の人ともワラエキのお話をしたり。  そうこうしているうちに、ユキミちゃんが言い出したんです。 『あたし、使徒になる!』  そういえば、ワラエキは誰でも使徒にできる、と言う話だったと思います。  こんなに素敵な天使様なら、使徒になってみたいと思う人がいても仕方ないでしょう。彼女が教室で宣言すると、みるみるうちにユキミちゃんの姿が変わっていきました。背中に、天使様のような翼が生えたのです。
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