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妖精眼の目薬
今日の魔法薬学の課題は、妖精眼の目薬だ。地上ではあまり見かけない、珍しい材料が実験台の上に並ぶ。虹色に輝くホタル魔光貝の粉末に、きざんだ灯篭クラゲの触手、飛翔するトビウオの羽が切り取った夏空の欠片。それらを四グラムずつ計りとり、セイレーンの歌が溶け込んだ水の中に入れて、小一時間ほど弱火で煮込む。その後ゆっくり冷ましたら、小瓶に詰めて完成だ。
何が見えるのだろう。僕は提出する前に目薬を差してみた。丸い窓に視線を向けると、こちらをのぞき込んでいた水の精と目があった。僕が控えめに手を振ると、彼女は息を吹いてハート型の泡を作った。水の精って案外可愛いかも。先生に気づかれないよう、僕はそっとウィンクした。
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