気になるひと

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気になるひと

創作や日々の出来事について、仲間とメッセージを交わすのも最近の日課になっていたが、仕事が立て込んでいる時は返信が滞ったり、相手の作品を読むタイミングを逃したりもする。今日も夕食後に確認していると、一件の通知に気づいた。 『カイさんからコメントが届いています』 誰からリアクションを貰っても嬉しいが、彼の名前を目にすると、心の中にぽっと明かりが灯ったような感覚がある。  読んでくれたんだ 彼の投稿作品はゼロ、つまり読み専と呼ばれる人たちだ。私は文章を書くことは好きだが、読書感想文は大の苦手だ。自分がどう感じたかを文字に起こすのは難しく、なかなか上手い表現が見つからない。作品にレビューや感想を送ることも可能だが、私はせいぜい刺さったページにひとことコメントを添えるくらいしか出来なかった。 カイさんは違った。 ページごとには勿論、最後に物語の全体を把握して褒めてくれる。最近では直接やり取りすることも増えて、私は密かにそれを楽しみにしていた。 いつもながら私の意図を理解して、登場人物の心情を察してくれる彼の的確なコメントに、私の口元は自然に緩む。作品の話からお互いの好きなもののことにまで話題が広がると、音楽や小説、映画の趣味も何となく似通っているし、たとえ知らなくてもお勧めされたものには、どれも好感が持てた。 彼に親近感を覚えるのに時間はかからなかった。
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