クラス会

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クラス会

 秋の初めに高校のクラス会があった。担任だった先生の定年退職に合わせて企画されたようだ。楽しみな反面、気がかりもある。  何を着ていこう… 仕事にかまけて、このところ服やメイクにまで気が回らなかった。鏡を覗き込むと目元の小ジワやほうれい線が目に付いて、急に自分の年齢を思い知らされる。同級生相手に見栄を張ってもと思いつつ、みすぼらしい姿では行きたくない。ネットで流行りのメイクとコーディネートを眺めて、ボーナスでワンピースも新調した。 「シギ! 久しぶりー」  相変わらず旧姓をもじって私を呼ぶ優里(ゆり)と、待ち合わせて会場のホテルへ向かった。彼女とも二年ぶりだ。受付には懐かしい顔もあれば、すっかり変わってしまった面影もある。そんな中、担任の先生は白髪が増えただけで穏やかな笑顔は変わらなかった。 「え。あれ、広瀬くん?」  浮き足立ったような女子の声に顔を向けると、クラスで一番大人しかった広瀬くんが来るところだった。口数は少なかったけど、成績は良かったから進学も就職も順調で、今は幸せな家庭を築いているという噂だった。 華々しいキャリアが自信に繋がったのか、あの頃よりも垢抜けて心なしかイケメンに見える。それとも、私たちがダイヤの原石に気がつかなかったのか。リア充組には近づきがたいなと、私は遠くから彼を見つめていた。広瀬くんは皆の笑顔に迎えられて、輪の真ん中で輝いて見えた。
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