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委員会
「鴫原。ちょっと付き合ってよ」
一次会が終わると上機嫌の広瀬くんにつかまった。ハイペースでグラスを空けていた彼は、すっかり陽気になっている。
「臨時の図書委員会を開催するぞー」
「え? ちょ、待ってよ」
「行ってらっしゃーい。バツ同士楽しんできてね」
一緒に帰るはずの優里が笑いながら手を振っている。示し合わせたかのような流れだった。
何で 広瀬くんが私を
疑問で頭がいっぱいになりながら、酔って積極的になった彼に促されて、私たちは集団からはぐれた。
「結構穴場なんだ。そんな高くないし」
連れていかれたのは、落ち着いた雰囲気のあるバーだった。こんな洗練された街でお酒を飲むのは初めてだ。でも、全くの素面ではなくさっきまでの余韻も相まって、少しだけ楽しむ余裕が出てきた。
「あんな騒がしくちゃ話も出来ないからな」
「男子と合流すればよかったのに」
「それも楽しいけどね。今はこうして静かに飲みたい気分」
どういうつもりだろう
微かなときめきもあるが、二人の間に流れるのはとても穏やかな雰囲気だ。そのギャップに私は戸惑っていた。
「ちょっとごめんね」
注文を済ませてから、広瀬くんは外にある喫煙所に向かった。少し意外だった。優等生の彼に煙草は似合わない。二十五年の空白は、彼が抱えてきた葛藤の日々を浮き彫りにしていた。ガラス越しの、少し憂いがちに紫煙を吐き出す横顔は、きっと今の私と同じだ。
そういえば カイさんは喫煙者だっけ?
カイさんのリアルは何も知らない。
優しくていつも励ましてくれる温かい人。穏やかだけど自分の意思もある広瀬くんは、カイさんのイメージに重なる部分があった。さっきからこの状況にドキドキしているのは、きっとそのせいだ。
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