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證玲ョコ縺ョ螟ゥ菴ソ
気が付けば俺は、床に倒れ込んでいた。
腹部に激痛が先程まで走っていたはずだが、だんだんと痛みという感覚が何なのか分からなくなっていく。だんだんと思考もおぼつかなくなっていく。
死ぬのか。ここで俺は終わるのか。
だが死への恐れよりも、それ以上に、これから最期の景色として永久に刻みつけられるだろう景色への、困惑があった。
「あー、もしもしー? うん、終わった。終わったけど、なんだか見つかっちゃったみたいで……うん、そういうこと、私捕まるみたい」
俺を刺した女が、さも当然のように電話している。友人に電話している妻の顔ですら、それよりも晴れやかだった記憶はない。
今際の際に持つべき感情ではないのだろうが、とにかく気味が悪いと思い、どうにか逆の方を見る。そこには俺を守ることもできないSP達が突っ立っていた。
動けないか。それについては、俺もそれを理解してやれる。怪しまれずに俺に接近し、ごく自然に致命傷を負わせ、挙げ句日常の一部であるかのように電話をしている。流石に動けまい。
右を向けば狂気が、左を向けばそれに怯える情けない男達が見える。俺はこの狂気から逃れることはできない。
俺はそれなりに覚悟はしたつもりだ。政治家をやってて、嫌われ者をやってて、殺しにかかる人間もいるだろうとは。しかし今、こんな形とは。
こんな死に方だけは嫌だ。必死に呼吸をする。そうすれば、生きていられるような気がした──だが。
「じゃ、そういうわけで。お勤めになっちゃうからお金は払わないでいいよ、じゃあね〜」
電話を切りながら喉にナイフを落とされ、遂に俺の息は止まった。
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