苗字ほど変えられないものはない

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苗字ほど変えられないものはない

「というか」  天使先輩って、学校で見た感じと全然違う。イケメンぶりは変わらないが、優しいとかジェントルメーンの雰囲気はあんまりない。どっちかというと 「鬼だ」 「だから、鬼だって言ってんだろ」  天使先輩は面白くない、という顔をして私の隣のフェンスに寄りかかった。 「俺の苗字が『天使』のせいで、昔っからエンジェルと結びつけて騒ぎ立てる奴らがいるんだ。本当にめんどくさい。俺は鬼族だ」 「はあ」 「苗字から俺の人物像を勝手に作り上げる……もう表ではそんな奴らの偶像崇拝に付き合ってやってるだけだ」 「へえ」 「なんで俺がそんなことをしてるかというと」 「ふう」 「おい聞けコラ」  私は早く家に帰りたかった。何故なら華金だから。  イケメン鬼の長話はどうでもいい。
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