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男にはね、利子まできっちり返してもらう。それが女の・・
それは渡良瀬繭の手紙が届く爽達に一か月ほど前のことだった。
山音爽は以前から誘われていた芸能プロダクションの人間と大学近くの喫茶店で話を聞いていた。
「日本武道館?」
「そう、おそらく、そこが君の夢のスタートになる、そしてそれが歌手山音爽の最終到達地点にもなるはずだ」
彼はあたかも目の前にある未来予想図を指し示すようにそう言った。
「君に選択肢はないはずだ」そう言っているようにも聞こえた。
いつも思い描く一万人を超える大観衆。そんなイメージは爽の中にはいつもあった。
渋谷の駅前広場で歌っている時も、原宿のホコ天でみんなと一緒に歌っいても、爽の気持ちだけはいつも武道館にあった。
繭さんの書き残してくれた詩と、私の作った曲、それを仲間とともに歌える。それも武道館で。
そこへこの人は連れて行ってくれると言っている。私たちの夢を叶えてくれると言っていた。
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