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「愛はあるのかって?
そりゃ、あるんじゃない?
なかったら、結婚しないよ、晴乃ちゃん」
と征也は言う。
仕事の帰り道、バッタリ出会った征也に誘われた充悟は、屋台で呑んでた。
もちろん。
晴乃が待っているので、軽く、一、二杯呑んだら、すぐ帰るつもりだ。
「俺みたいなロクでなしでも、情が厚いから捨てられないだけなんじゃないかと思って」
「別にロクでなしじゃないと思うけど。
……ああ、でも僕にこんな、聞きようによっては惚気にも聞こえる相談をしている時点で、ロクでなしかな」
と冷酒を呑みながら征也は言う。
征也は熱々のおでんを見つめ、呟きはじめた。
「でもそうか。
情が厚くて捨てられないのなら。
僕とでも、一度でも家族になってしまったら、捨てられないのかな……」
……一体、どういう手段で家族になるつもりなのか、怖い。
人がいいことには違いないが、いろいろと底知れないところがある征也と話しながら、
さっさと結婚決めておいてよかった。
油断してたら、絶対、持ってかれるとこだった、
と思って、今更ながらに、ゾッとした。
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