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黒い羽
『天使の羽が白いなんて誰が決めたんだ。』
天使の幼稚園でミヒャエルがブツブツ言っていました。
「泣くなよ。俺なんてグレーのブチだぜ?」
マサがミヒャエルに話しかけてきました。
「泣いてなんてないさ。たださ、名前がミヒャエルだよ。どう考えても大天使ミカエルとダブるだろうが。
大きな白い羽をつけて優雅に浮かんでいなけりゃ。」
「この年で浮かべる天使もいないでしょう。」
話を聞いていたラフィが話しに割り込んできました。
「大丈夫。白鳥と同じで白い羽にそのうち生え替わりますよ。
そして、成長に合わせて羽も体も大きくなりますって。」
そういうラフィは微妙な緑色の羽をしながら二人を見ています。
「は~い。みなさん集まって。歌の練習をしますよ。」
「これもなぁ。何となく天使が人間を迎えに行く時には綺麗な音楽が流れているってイメージ先行でしょう?
元々は静かに迎えに行って、そっと命を召された人の魂を持って天にあがるのにさ。
なんで、魂を持たないメンバーがバックコーラスすることになったのさ。」
「まぁまぁ、人間のイメージってやつも大切でしょ?
みんながイメージと違う天使を見て天使を信じなくなったらお仕事なくなりますよ。」
「だからって裸で子供の魂を迎えに行くのは勘弁してほしいよね。
天使には性別がないとは言っても恥ずかしいし。」
「いいじゃない。迎えに行くのは最初から白い羽を持った子供の天使なんだし。少なくともこのメンバーは選ばれないよ。」
「あぁ~、早く大人になって、羽が生え替わって長い衣装を着て人間を迎えに行きたいよ。」
その頃、園長先生はその話をテレパシーで聞いてどのタイミングで子供たちに伝えようか迷っていました。
「困ったわねぇ。この幼稚園は堕天使の幼稚園だから生え替わるのは黒い羽で、人間と会う時は死神と一緒に地獄へ行く魂を迎えに行くんだってこと、どのタイミングで話しましょう。
それはそれでりっぱなお仕事なんですけどねぇ。
人間も良い人間ばかりではありませんからね。
歌もねぇ。
全部「オー〇ン」の挿入歌なのに。
この怖い感じに気づかない所がまさに堕天使よねぇ。
だいたいあの子達は察しが悪すぎますよ。
先生方も私もみんな黒い羽をしているのに。」
ここは堕天使を育てる幼稚園。
地獄の入り口にある。
【了】
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