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クリスマスの夜は静かだった。
暗闇の中で、ラジオの音声だけが鳴り響いていた。
ぼくは緊張がピークに達していたせいか、なかなか寝付けなかったせいもあり、今頃になって睡魔が襲ってきた。
あの男は言っていた。もう少しの辛抱だと。だから、ぼくは耐えてきた。その言葉を信じて。
うつらうつらしていると、部屋の外が俄かに騒がしかった。そして、さっきまで暗かった窓の外が眩しいくらいに明るくなった。今が昼間なのではないかと思うほどだ。
一体、外で何が起きているんだ?ぼくは恐る恐る窓を開けようとした。だが、それより先にドカドカと複数の人たちが部屋に雪崩れ込んできた。
ぼくは夢を見ているのではないかと思って、ただぼんやりと部屋に入ってきた人たちを見上げるばかりだった。
一人がぼくの肩を揺さぶり、「守谷資仁くんだね?」と訊ねた。
ぼくはとりあえず、うんと頷いた。
すると男の人は無線のようなもので、どこかに連絡をしていた。その一部始終を見ているうちに、ぼくは助かったのだと自覚していた。
じゃあ、インディアンのお面の男はどうしたのだろう?そう言えば、いつも部屋にいた男は、今日は朝から姿を見ていない。クリスマスだから、友だちの家にお祝いをしに行ったのだろうと、ぼくは考えていた。
ぼくは男の人たちに手を引かれ、部屋の外に出る間際、台所の上に放置されていたチキンを鮮明に覚えていた。
こんがりとキツネ色に焼かれたチキンを見た瞬間、おかしな話だけど、空腹を覚えた。
ぼくは病院に運ばれて、身体検査を受けた。
少しの脱水症状が見られたため、点滴を受けた。
ほどなくして、お父さんとお母さんが血相を変えてぼくのもとに駆け付けた。
お父さんはぼくの手をしっかりと握りしめ、頭を撫でた。お父さんの背中越しで、お母さんはハンカチを目にあてていた。いつも見ていた両親が、この時はなんだか棒人間のように見えた。
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