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 天罰とは、また誇大妄想にもほどがある。葛城は甘粕の自宅の前でタバコを吸い始めた。 「葛城さん、先に現場に入りますよ」 「なあ、おまえ、天罰ってあると思うか?」 「急に何ですか?」 「いや。ここの町民がまるで、町長の死を歓迎しているように見えたからな」 「葛城さんはオカルトマニアですか?」 「バカ言うな」  その一言が癇に障ったのか、葛城はタバコを捨てて、つま先で踏みつけた。  町長は書斎の中のベッドに横たわったままだった。  秘書の男性が車で迎えに来て、いつものようにインターホンを押したが、応答がなかったので合い鍵で入ったという。  秘書は不思議に思ったという。  欠かさず毎朝、ルーティンで目玉焼きとトーストといった朝ごはんを作って食べるのに、その朝はテーブルに朝食を用意した痕跡がなかった。  まさか、寝坊だろうか?いや、そんなはずはない。昨夜は早く役場から帰ったし、今朝はテーマパークの具体的なプレゼンも控えていた。だから寝坊なんて考えられない。  秘書は念のため、甘粕の寝室兼書斎のドアをノックしてみた。寝入っているのか応答がなかったので、無礼を承知で室内に入った。そこで死体を発見した。  秘書は、あまりにも穏やかな顔で甘粕が横たわっていたので、ほんの束の間、熟睡していると思ったという。  しかし、呼吸をしていないことがわかり、蘇生を試みたが、息を吹き返すことはなかった。  死因は心不全。一応、町長は司法解剖に回されることになった。
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