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秘書は警察や議会関係者、テーマパークの工事関係者などに、甘粕の死亡を伝えた。
秘書の小松慎一は2キロほど痩せてしまったような感覚だった。最近サボり勝ちだった運動不足が祟って、警察から事情聴取を受ける頃にはゴールテープを切ったランナーのように疲労困憊だった。
「小松さんは甘粕さんとは官僚時代は同期でしたね」
葛城が取調室で聴取をし始めた。
「ええ。お互い通産省にいましたから。あ、現在は経済産業省ですかな」
「やっぱり、甘粕さんは切れ者でしたか?」
「そうですね。あいつは官僚よりも政治家タイプでした」
「敵も多かったのでは?」
「歯に衣着せぬ発言で上とはよく、衝突してましたね。だから、あいつ、ボクシングジムに通って身体も鍛えていました。ジムの人からプロボクサーに転向でもしたらどうだなんて、言われていました」
「そんな強靭な男があっさり心不全であの世行きですか...」
葛城は胸ポケットからタバコを取り出そうとしたが、小松が眉をしかめたので、手を引っ込めた。
「町民には不人気だったみたいですね」
「はい。彼は現状に満足するような男ではありませんでしたから。でも、わたしはそんな彼の変化を求める心に惹かれて、秘書になったんです。刑事さん、間違っても、わたしは彼を殺したりはしません。かつては同じ釜の飯を食った仲でしたから」
そう来たか。こいつは警察捜査の常道を熟知しているな。まずは第一発見者を疑えは鉄則だ。
「小松さん、あんまり怯えないでください」
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