恋するジャック・オー・ランタン

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 結局のところ、体に染み込む年功序列思考とサラリーマン社畜のサガで断れなかったというのが事の経緯だ。  懸念はあった。俺は別にお調子者キャラでない。笑われるならまだいいが、仮装したものの完全シカトも有り得る。それが一番辛い。  俺は成り行きを天に任せた。  その日は定時に仕事を切り上げ、醤油顔で名高い顔面を親しい同期の女子の手を借りて何とかした。 「あんたヤバいよ。超カワイイ」  同期は興奮していた。  確かに、鏡の中の俺は最高に可愛かった。女の化粧は詐欺だと身をもって知った。  首元の開いたセーターにネックレスは定番だ。タイトなスカートは膝が隠れる長さだが、姉と体型がほぼ一緒であったことに男としての矜持が崩壊したものの、座れば膝が見えるぐらいのエロチシズムは程々にした。極めつけにストッキングやハイヒールを履いた。胸パットを重ねながら好みの女に変身した自分に欲情しそうになった。  同期からハイヒールの歩き方を伝授して貰い、いざ戦場へ、もとい盛り場へ。  で、結果として飲み会での反応は上々だった。
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