恋するジャック・オー・ランタン

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     飲み会終了後、二人でカラオケに行った。  先輩は俺にピタッとくっついて、俺が歌っているときも俺の太腿を触ってきた。どうやら先輩、脚フェチらしい。 「イタズラは駄目ですよぉ」 とマイクを通していなしていたら、突然その手がスカートの奥まで入ってきたからビックリして俺は飛び上がった。急いで腰を引いた。 「な、何するんですか」 「ホテルに行こう」  息を荒くする先輩にたじたじになった。 「今、俺のを触りましたよね。わかってると思いますけど、俺、男ですよ」 「そのカッコならどっちでもいい」  ヤバいぞ。厄介な展開になってきた。 「ゲイだったんですか? 先輩」 「違う」  俺はマイクを取られて、ガシッと腕を掴まれた。  俺達はそのままカラオケボックスから出た。  腐っても普段とんでもなくお世話になってる直属の先輩だ。細かいことにも五月蝿くしつこく注意して嫌味な人だが、いつもフォローして貰っている。  俺のこの完ッ璧な女装がこの人をおかしくしてしまったと思ったら、騒ぎたてることも出来なかった。腕を引かれたまま街の喧騒を抜けた。  慣れないヒールの靴を履いているというのに急かされるので何度も転びそうになった。先輩は俺をどう認識しているのか。取り敢えずこの人、女の扱いは下手そうだ。モテるのに。  横道に入って直ぐにあったラブホに先輩が突入したときは血の気が引いた。  この人、本気だ。  俺は抱えられるようにそれ用の部屋に連れ込まれてしまった。ここまで、カラオケボックスを出てから十分も経っていなかった。
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