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「きまじめ楽団のぼんやり戦争」という映画を見たことがあるのですが
不協和音のように体にはなじめない内容なのです。
自分の中の不条理に対面しているように後にぬったりと残るのです。
川向うの相手との朝9時から夕方5時までの戦争とか、理由もないのに戦うのはなぜなのかしら? と疑問が頭に入り込み、
ある日敵対国の脱走者が川を泳いでやってくる……くだりでは
ここより架空の話
川むこうには確かに村があり、人が住んでいるようでした。
下小目村の吾作が土手に上がり向こうを仰ぎ見れば
家から立ち上る煙が火を使っている人がいることを知らせてくれます。
ただし堤の向こうの低いところになるのか家々を見ることはできま
せん。
おおい、と声を出したこともありました。
夕刻です。たしかに残照の中に人影があったのです。
しかし、その女性と思われる者は落ちるように堤に隠れてしまったのです。
吾作は何とかと不便に思いました。橋があれば向こうの様子を知ることが
できるのに。
何とか橋を架けられないものか? と。
その年は野分の多い年でした。
稲刈りをする間もなく大嵐がやってきて、金色に輝く稲をなぎ倒し
水浸しの茶色のざんばらにしていきました。
それでも懸命に鎌をふるい、稲架に掛けて天日干しをしました。
米は半分以上が腐ってカビが生えたりしましたが、
なんとか自分の家の7人が食べるだけは収穫ができました。じかし税を納め
る金はありません。
冬が近づいたある日吾作は名主の中山政右ヱ門に相談に行きました。
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