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女工たちは3日に一度、風呂に入ることができた。
ポンプがある程度までくみ上げるが、それだけでは十分ではなく
当番の女工が列を作り、井戸からバケツリレーで水を運んだ。
仕事を終えた後、くたくたの体での作業は
タミを疲弊させ、正直風呂などどうでもよい、と思える日がほとんどだった。水はあんなにすいすい流れるのに、持てば手の平にバケツの柄が食い込んだ。
その年は日照りだった。
母親からの初めての葉書には田んぼの水が干上がり土がひび割れている。今は食べるものにも困っているので、お盆の帰省も帰ってこないでくれ、という内容だった。
水は
ここではこんなに水があるのに、とタミは井戸を覗いた。
こんこんと湧き出ている井戸は青く、どこまでも澄み切っていて
どれだけ汲もうが枯れることはなく、
タミにさやさやと語りかけてくる。ここは気持ちいいよ、と。
ああ、と思った。あそこにもう一人の私がいる。
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