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すでに11月だというのに彼は冷房をつけていました。
守り人は暑がりの体質を受け継ぐのです。
暑さのあまり夜になると沼に身を沈めに行きます。深さは1メートルもありません。しかし座れば肩まで沈めるくらいの窪みがありました。
何年も何年もそうやって沼と共存してきたのです。
沼の水位に変化がないうちはそれでいいのです。
その家には「家族」が住んだことはないのです。
男が妻を得ても、彼女たちは沼を疎いました。たえず発生する虫と湿気と女人にだけ感じる肌にねばりつくような気分の悪さからでした。
妻はよそに移り、または婚姻関係はそのままで、男が通うこともありましたが、子ができれば、それも間遠くなります。
やがて男が死ぬと、成人に達していた男子は、なぜか沼のほとりに住むようになります。まるで生まれる前から決められていたように。
わたしはフィクションをひとつ書こうと決心しました。
もう、妄想はとめられません。
タロットがどうのこうのとか、池がとか、個人的な趣味のくだらない延長、
エッセイまがいの駄文を書くより、やはりフィクションでしょう!
さあ、帰ってパソコンに向かおうと私は能場沼を後にしました。
ちなみにこの沼はすぐ近くを流れる利根川の蛇行により、発生したものとひとり判断しました。
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