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むせるようなカビ臭さに、鉛のごとく沈んでいた意識がひと息に浮上した。
ガツン。
「痛っ‼」
跳び起きようとして額を何かにぶつけ、ひとり呻く。表情を歪めながら辺りを窺うと、どうやら堅い板の上に寝かされているようだ。
辺りは闇。瞼を開いているはずなのに何も見えない。
(え、何?)
探るように正面の闇に向かって手を伸ばしてみると、肘を伸ばしきれないうちに何かに触れた。
板のようだ。ざらざらとした木目を感じる。
ずいぶんと低い天井を確認してから、次は左右に両腕を広げてみる。ほんのわずかに広げただけで腕が壁にぶつかった。
壁といっても石やコンクリートではなく、こちらも天井と同じで板のようだ。
どうやら板の上に寝ているのではなく、木製の箱の中に入れられているらしかった。
(なんで? どういうこと?)
とにかく出よう。天井だと思った板に両手をつくと、思いっきりそれを押し上げた。
ガタッ。
音が右に左に流れるように響く。板はずっしりと重く、力一杯に押し上げても指三本分くらいの隙間しか動かなかった。
だが、動く。動くということは閉じ込められているというわけではないのだ。
出られる。
――出たい!
体を丸めて膝を折ると、両足を使って力の限り板を蹴り上げた。
ガタンッ‼
けたたましい音を反響させて板が浮き上がって、そして箱の脇にドスンと沈んだ。
(どこ、ここ?)
上体を起こし、改めて辺りを見渡した。
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