1. 召喚されて魔王の身代わりになりました

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 むせるようなカビ臭さに、鉛のごとく沈んでいた意識がひと息に浮上した。  ガツン。 「痛っ‼」  跳び起きようとして額を何かにぶつけ、ひとり呻く。表情を歪めながら辺りを窺うと、どうやら堅い板の上に寝かされているようだ。  辺りは闇。瞼を開いているはずなのに何も見えない。 (え、何?)  探るように正面の闇に向かって手を伸ばしてみると、肘を伸ばしきれないうちに何かに触れた。  板のようだ。ざらざらとした木目を感じる。  ずいぶんと低い天井を確認してから、次は左右に両腕を広げてみる。ほんのわずかに広げただけで腕が壁にぶつかった。  壁といっても石やコンクリートではなく、こちらも天井と同じで板のようだ。  どうやら板の上に寝ているのではなく、木製の箱の中に入れられているらしかった。 (なんで? どういうこと?)  とにかく出よう。天井だと思った板に両手をつくと、思いっきりそれを押し上げた。  ガタッ。  音が右に左に流れるように響く。板はずっしりと重く、力一杯に押し上げても指三本分くらいの隙間しか動かなかった。  だが、動く。動くということは閉じ込められているというわけではないのだ。  出られる。  ――出たい!  体を丸めて膝を折ると、両足を使って力の限り板を蹴り上げた。  ガタンッ‼  けたたましい音を反響させて板が浮き上がって、そして箱の脇にドスンと沈んだ。 (どこ、ここ?)  上体を起こし、改めて辺りを見渡した。
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