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……………
「…いいよ。親に挨拶なんて」
「ダメだよ。そういうのはちゃんとしたい。俺も妹いるから、同棲するって彼氏が挨拶に来たら印象いいもん」
そりゃあ…緊張するし、不安ではある。
でも…政略結婚のこともあるし、ちゃんと恋人がいることを、ご両親に印象付けたい。
白亜のマンションにも驚いたが、実家にも驚いた。
まるで要塞…。
塀の向こうがどうなっているかまったく見えない。
インターホンと認証システムで開く扉。
その向こうに広がる敷地面積は、ちょっとした学校だ。
「…やぁやぁ、よく来たね!君が真莉くん?」
「はい。真莉水樹と申します。優菜さんとお付き合いをさせていただいております」
意外なほど友好的な優菜の父親は、どこかチャーミングで、そんな特徴は優菜がしっかり受け継いでいると感じる。
「いろいろ準備したのよ?真莉くん、たくさん食べてね?」
案内された広いリビングには、エプロンをした母親らしき女性が楽しげに食事の準備をしてくれていた。
「真莉くん、さぁ…まずは一杯!」
お父さんに並々とビールを注がれ、言われるままに飲み干し、気づけばなんだかリラックスした雰囲気…
「あの、今日はご両親に…優菜さんと同棲している報告に来ました」
もういろいろ考えるのはやめにして、直球で行くことにする。
「優菜さんのことが、なんというかもう…好き、でして。だから…は、離れたくなくて、ですね…。一緒に暮らすことにしました」
ご両親はニコニコ笑顔で聞いてくれている。
横を見ると、優菜は少し緊張した顔だ。
「もちろん、1人前になった暁には、将来のことも真剣に…」
「うん。真莉くん、十分だよ」
ご両親は俺の言葉を途中で遮って、笑顔のまま、残酷なことを言った。
「真莉くんと優菜が結婚して、うちの会社に、どんないいことがあるかな?」
「…え?」
思わず絶句する俺を庇うように優菜が言う。
「真莉ちゃんのお父さん、有名なシェフだよ。頼めば、美味しいもの作って食べさせてくれるかも…」
え…と。それが、俺と結婚した場合の笹川開発にとってのいいことなのか?
…かなり疑問だが、もう、それに乗るしかない…!
「そ、そうなんです。僕の父が経営するレストランは、3年先まで予約が埋まってます。だからその…腕は確かです」
ご両親はそう言った俺に優しく笑ってくれた。
「魅力的な話だ…!」
…あとは何も言われず、俺はひたすら食べて飲まされた。
緊張もあって少し酔ってしまったが、とりあえず認めてもらったということでいいのだろう。
ごちそうになったお礼を言って、俺たちは優菜の実家を出てマンションに帰った。
…近いうち、父に会いに行って、万が一のときは料理を作ってもらえるよう頼んでおこう。
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